久世光彦とサヨク

昔使っていたMDを整理していたら、「ラジオ深夜便」から録音した朗読が出てきた。久世光彦の「マイ・ラスト・ソング」。久世光彦は好きな人が多いようだけど、私は感傷的すぎてあまり好みじゃない。朗読を聞いていたら、「カチューシャ」にまつわる話として…

ETV特集「カズオ・イシグロをさがして」メモ

あー、正直、カズオ・イシグロだけでよかった。女優とかタレントとかが「私とカズオ・イシグロ」を語るのが長すぎるし、興味がないしなあ。なぜか福岡伸一がインタビューに行くのだが、福岡伸一のお説より、ちょっとでも長くイシグロの話を聞けたほうがいいだ…

神林長平の本棚

「本棚2」という本を読んだ。私はもともと荷物をためやすいタイプで、部屋探しの度に絶対条件は「荷物が入る部屋」だった。しかし去年の、4ヶ月に3回の引越しをした時に考えを変えて、もう身の丈にあった荷物だけにしようと決めた。だけど、見るのは好きで…

80年代のマリ・クレール

ものを減らすためにいろいろ整理中。80年代の雑誌マリ・クレールが2冊残っていて、処分するため読み返してみた。ほんとはたくさんあったのだけど、何回か前の引っ越しの時に読書案内特集の2冊を残して処分していた。80年代後半、一時期のマリ・クレールは、…

筒井康隆「漂流」で

http://book.asahi.com/hyoryu/ 朝日の書評で筒井康隆が『アウル・クリーク橋の一事件』という短編を紹介していて、たしかにこれはおそろしいと思い、ぐぐってみたら翻訳を載せている人がいた(原文はプロジェクト・グーテンベルクにおさめられている)。誉…

勝目梓『小説家』と西村賢太

評判が良いようなので『小説家』読んでみました。 どうも私は小説じたいがとっても好きというわけではないので、すごーく面白かった!と思うハードルが高いようです。目が肥えてる、というわけではありません(目が肥えるほどたくさん読んでいない)。もとも…

本宮ひろ志は徒党を組む

『ニッポン不公正社会』(斎藤貴男・林信吾)という対談本を見てたら、こういうことが書いてあって、笑ってしまった。そうかもしれない。 さ:(略)梶原一騎の漫画みたいに生きたかったから。あれ全部一匹狼じゃない? だから本宮ひろ志の『男一匹ガキ大将…

嵐山光三郎『桃仙人』

荒俣宏編集の『知識人99人の死に方』というムックで深沢七郎がものすごく変な人だと知って、深沢の思い出を綴ったというこの本を見てみた。普通に回想録かエッセイにすればいいのに、なぜか小説仕立てで、そのせいで読みにくい(あまり、うまい小説とはいえ…

青山七恵『ひとり日和』 いかにも芥川賞(いか芥)

(2年ぐらい前にメモしてたのが出てきたので、古いけど) 07年の芥川賞受賞作だそうで、もう、すごく、いかにも芥川賞(昨今の)という感じだった。選考委員の中でも石原&村上が絶賛して、山田詠美が否定的だったとのことで、まあオヤジ受けするというか、…

『生きづらい〈私〉たち』香山リカ

読んでたらいいことも言ってるのに、読み終わったらなんも残らん。この人の本はいつもそうな気がする。悪い人ではなさそうだけど、本質的に軽いのかな。そして本質的に楽天的なのか。やっぱり80年代文化人なんだなーと思う。本の前半は面白いけど、後半はあ…

林芙美子

ちょっと気が向いたので図書館で借りてみた。よく「貧乏の中で強く生きる女の物語」などという言い方をされる「放浪記」だけど、読んでみたら相当、女くさい(「男くさい」という言い方があるのだから「女くさい」もアリでしょう)。貧乏というより、男の話…

『右翼と左翼』浅羽通明

斎藤美奈子も飲み屋の兄ちゃんに「サヨクとかウヨクってなんすか?」と聞かれてコケそうになったと書いていたけど、浅羽通明も学生たちに同じ質問をよく聞かれるらしい。しかも、政治にまったく興味がない人ではなく、ある程度興味を持って本も読むような学…

『倅・三島由紀夫』平岡梓

半年くらい前に読んだのだけど、「えげつない」と感じるくらい変だと思ったのは、嫁(三島の妻)について全く触れていないことだった。不自然なくらい触れていない。孫のことはよく出てくるのに、その母である三島夫人については全くのスルー。たったのひと…

『赫奕たる逆光』野坂昭如

読みにくい。疲れた。副題は「私説・三島由紀夫」だけど半分(以上?)は自分の話。酔っ払いの話を聞いてるみたい。同じ話はぐるぐると何度も出てくるし、どこまでが事実でどこからが妄想かわからないし…。 野坂昭如は「火垂るの墓」のイメージで、戦争で何…

『父 中原淳一』中原洲一

去年、高英男というシャンソン歌手が亡くなり、聞いたことがない人だったんだけども、何でも中原淳一の愛人で最期を看取った人だという。中原の息子が書いた本にそのことが触れられているというので、読んでみた。中原淳一の絵にはぜんぜん興味がないけれど…

典雅(グレースフル)な三毛

ここ数年、正月には寺田寅彦の猫エッセイを読んでいる(何となく正月らしい気がして)。手元にあるのは「ねずみと猫」と「子猫」。他にも飼い猫2匹が死んだ時のことを書いた、涙なしでは読めない短いエッセイが確かあったけど、題名は忘れた(青空文庫で検索…

しもじもの思い

この間読んだ『少子社会日本』で、山田昌弘は、厚生省の審議会などに招かれて何度も自説を披露したが、自分の主張は「研究者、官僚、マスメディアの人たち」にはなかなかわかってもらえなかったと(最初は隠蔽された、というようなことも)書いている。 「だ…

山田昌弘『少子社会日本』 身も蓋もなし

身も蓋もないことを言うので、なんやかんや言って面白い部分もあります。少子化の話より、後半の第7章(恋愛結婚の消長)が面白かった。 「男性の魅力は、経済力に関係した要素によって一元化される傾向がある。スポーツができたり、リーダーシップがあった…

『徹底追及「言葉狩り」と差別』週刊文春編・『「差別表現」を考える』日本ペンクラブ編

前に読んだ『差別用語を見直す』が面白かったので、類書見てみた。どこからも抗議がなかったとしてもそれが「空気」だからと未だにタブー語が増えていくばかりなのは、やっぱり大手マスコミの怠慢が大きいと思うわ。70〜80年代の事例にしたって「やりようは…

ポルノ映画館で観た『赫い髪の女』

中上健次で思い出したけど、ずっと前に日活ロマンポルノ上映会に行ったことがある。いろんな作品をやっていたはずだけど、私が観た回は『赫い髪の女』と『実録 阿部定』の2本立ての日。普通の映画館でしてくれたらよかったのに、わざわざポルノ映画館でやっ…

『十九歳の地図/蛇淫他(中上健次選集11)』

中上健次の初期ってこんなに青春小説だったんですね。なにせ初出は文藝とかすばる(文藝とかすばるって昔からワカモノの青春噺が好きな雑誌だったんですね)。中上健次といえば「無軌道で荒々しい路地の若い衆」だけど、初期はどっちかといえば繊細で潔癖(…

『それってどうなの主義』斎藤美奈子

しばらくチェックしてないうちにたくさん本が出てたので追っかけ読んでみた。書評じゃなくて時評みたいな感じ。まあ、サヨク時評というか…。最近、はっきりサヨクってめっきり目にしないから「うわーこんなこと言って大丈夫なのかなあ」とかハラハラしてしま…

『差別用語を見直す』江上茂

副題マスコミ界・差別用語最前線。これは予想外に面白かった。図書館の人権コーナーの棚にあったから地味でつまんない本に違いないと思ってたら、あんまり面白くて読むのがやめられんくらい。まあ、マスコミへのいわゆる糾弾の歴史について詳細に記録したも…

包茎文学@斎藤美奈子

「清水研究員のアジアな日々」の清水研究員さまから、「アンタは確か村上春樹のことを『包茎文学』と言ってなかったか? あれはまさにピッタリやと思ったが」とメールをいただいた。ええっ、私がそんな下品なことを?言った気もするが覚えてない…(最近物忘…

村上春樹が嫌い

『ノルウェイの森』の春の熊がどうしたとかいう噴飯物のくだりを読んでから、人はこんなもんよく読めるなあとずっと思ってきた。今でもそう思っている。もったいぶって何か言ってるようで実は何も言っていない(例のイスラエルのスピーチでもそうだった)、…

栗本薫/中島梓のこと

子供の頃にこの人についての雑誌記事を見たことがあり、その中でやたら「美人」とか「才色兼備」とか謳われており、写真も載っていたのだけど、「きっと大人の世界ではこういう人が美人なのだろう」と無理矢理納得したのを覚えている。無理矢理納得した割に…

ロジャー・パルバース

いつものように夜更かしをしてラジオ深夜便をBGMにしていると、ロジャー・パルバースが宮沢賢治の話をしていた。宮沢賢治には宗教色(日蓮宗)の色が濃いが、これは日本文学には珍しいことなのだと言う。日本人はどちらかというと、谷崎や川端にみられるよう…

『ネコの毛並み』という本

ずっと前にどこかの図書館で借りて読んだ。著者は野澤謙という動物遺伝学者の人で、裳華房というところから出ているが、まあブルーバックスみたいな一般向け化学の本だった (1996/03)。猫の毛並みの柄が遺伝的にどうやって発現するかを素人向けに説明してい…

韓国人は猫が嫌い

韓国人は、在日嫌いであるとともに、猫が嫌い。前回韓国に行った時に猫を見たのは計3回。2度は野良猫で、日本で見る野良猫よりずーっと目が荒んでいた。誰をも信じぬ目といいますか。近づこうとすると脱兎の(猫だけど)如く逃げる。日本ならもっと近くまで…

バラードのインタビューより

PC内の数年前のメモにJ・G・バラードのインタビューの抜き書きが残っていて、この間たまたま読んでいたら、この4月にバラードが亡くなっていたと知った。 ユリイカ1986年のバックナンバー(J・G・バラード特集)に載っていた82年のインタビュー。話題はなぜ…