『それってどうなの主義』斎藤美奈子

 しばらくチェックしてないうちにたくさん本が出てたので追っかけ読んでみた。書評じゃなくて時評みたいな感じ。まあ、サヨク時評というか…。最近、はっきりサヨクってめっきり目にしないから「うわーこんなこと言って大丈夫なのかなあ」とかハラハラしてしまった気弱な私。いまどき斎藤美奈子ぐらいしかこんなこと書けないよなあ、と。
 何年か前、斎藤美奈子は対談で森達也のことを「サヨクの星」と言っていたけど、やっぱり森達也じゃちょい弱いと思うなあ。遠い目をするロマンチストみたいなとこあるからなあ森達也は。もっとビシッと言ってくれる人でないと。姜尚中はいまや「オクサマの星」だし(あ、こっちも遠い目をするロマンチストだ! いや、アゴに手をやるロマンチストか。男のサヨクはロマンチストなんだな要するに)。あなたこそサヨクの星ですよ斎藤さん、といいたい。最近は湯浅誠という新星も出てきたし、この人は弁も立つし、ちょっとは面白くなるかな?
 本は、空爆と空襲の言葉の違いについてとか、東西から東京へ近づく時の景色の違い(が精神に及ぼす影響)とか、一連の新潟ネタとか、面白かった。「漫画家の産地」がすごい。新潟県は人口比日本一の漫画家の産地だとのこと。近藤ようこ高橋留美子(この二人は高校の同級生)、高野文子水島新司柳沢きみお小畑健…王道から文学系、ガロ系まで大物が揃ってるのがすごい。
 ところで、おしゃれなラウンジバーの若いスタッフに「サヨクってあるじゃないすか。あれってなんすか? ウヨクってのもあるでしょ。どうちがうんすかね」と聞かれてコケそうになった話が載っているけど、おまえは俺か、である。私はわりと最近まで「サヨク」が何かをよく理解してなくて(「ウヨク」はまだわかりやすいんだけど)、知り合いに何度か尋ねたものだった。説明好きな人が詳しく教えてくれても、いまいち咀嚼できなかった。よく本を読む物知りの女の友達に「ハンドー的ってどういう意味?」と聞いたこともある。今、よくわからない言葉は「ゼンキョートー」。何度説明を聞いても、何だか話が細かすぎて、いまいち理解しかねるわ。
 あとがきにこう書かれていた。《十年前と比べると、さわらぬ神に祟りなしというか、長いものには巻かれろというか、ものが率直に言いにくくなってるな、という気がしてなりません》 そうでしょうそうでしょう、うんうんうんうん。