『差別用語を見直す』江上茂

 副題マスコミ界・差別用語最前線。これは予想外に面白かった。図書館の人権コーナーの棚にあったから地味でつまんない本に違いないと思ってたら、あんまり面白くて読むのがやめられんくらい。まあ、マスコミへのいわゆる糾弾の歴史について詳細に記録したもので、ほんとに細かく調べていて、資料的価値はすごいと思うなあ。こういうことについて系統立ってよく知らなかったから、なるほどそういうことだったのか、といろんなことが明瞭になりました。最近の放送業界の自主規制にはほんとイライラしてたけど、それにはそれなりの歴史もあったんだと、ちょっと同情的な気持ちになりました。
 してみると、昔読んだ森達也の『放送禁止歌』に不満が出てくる。この本の中でも貴重な内部告発だと誉められてはいるけれど、やっぱこっちの話を書かないと片手オチ(やっぱりATOK変換しない!)ではある。それにあの本では「放送禁止歌などなかったのだ。ただの自主規制だったのだ!」ってさぞすごい発見のように書かれていたと思うけど、業界にいてほんとに自主規制だと知らなかったのかな?だとしたらけっこう無知だよね?と思う。いや、ほんとにいい本だったけどさ。
 巻末著者紹介見て、東京国語大学という大学が本当にあるのだと、1分くらいは思っていました。大胆でいいけどさ(「フジテしビ」というのもあった)。