80年代のマリ・クレール

 ものを減らすためにいろいろ整理中。80年代の雑誌マリ・クレールが2冊残っていて、処分するため読み返してみた。ほんとはたくさんあったのだけど、何回か前の引っ越しの時に読書案内特集の2冊を残して処分していた。80年代後半、一時期のマリ・クレールは、表面は婦人雑誌だけど中身はほとんど文芸誌だった(おざなりなファッションのページとか一応あるけれど)。当時、中央公論社の文芸誌が廃刊になったためにそこにいた編集者や執筆者が流れ込んだためだと聞いている。婦人雑誌なのに、吉本隆明とか浅田彰とか中沢新一とか荒俣宏とか、なんかそういう人たちがレギュラーで載っているという、変なことになっていた。
 中に池澤夏樹の連載があり、この人のものを読んだことがなくて通俗作家みたいな人だと思っていたら(だって名前がそういう感じ。銀色夏生みたいだし)なんだか変わった旅行をしている紀行文で、わりと面白い。何者だろうと当時はなかったwikipediaを見てみたら、福永武彦の息子だったんですね。といっても本人は両親離婚のため父のことは高校まで知らなかったとwikipediaにはある。どうでもいいが、この連載「エデンを遠く離れて」が本になっているか見るために、やっぱり当時はなかったamazonで検索してみたら、この本も出てきたけど、同名タイトルのBL本のシリーズが30点近くどどどっと出てきたので笑ってしまった。昔はBL界もいい加減で(こんな大きい産業になるとは思わんかっただろうし)タイトルパクったのかね。
 同誌に筒井康隆の連載もあった。唯野教授を書いていた頃の日記。
「光子(注・奥さん)は東京に空がないという。
 銀座へ行っても渋谷へ出ても暗い空の下、みんなが暗い色の服を着ていて、神戸みたいな原色の服が見られないのだそうだ。」
 確かに、神戸は服のセンスが独特で、大阪京都では見ないような大胆な柄のワンピースとか着てるのを見ておおー神戸だなと思う。昔からなんですね。大阪もまあ、原色や大胆な柄の服は多いけれど…。
 山田詠美のことを書いてるのが面白かった。
「夜、山田詠美『カンヴァスの旅』を読む。やはり「オニオン・プレス」が傑作。色情感したたる文章が厭味なしに読めるのは、山田詠美という女性が不美人ではないからだ。眼を剥いて怒る向きもあろうが、真実だからこれはしかたのないことだ。天才であることは疑いのないところだが、彼女自身不美人でないということでずいぶん得をしている。誤解なきよう言っておくが、山田さんをおれは直接知らないし、逢わずともわかるのだが女性としてはおれの好みではない。それはともかく、直木賞をとってしまっているが、この資質はあきらかに大衆小説の資質ではない。純文学のものだ。」
 こちらも「幾たびもDIARY」という本になっています。