嵐山光三郎『桃仙人』

 荒俣宏編集の『知識人99人の死に方』というムックで深沢七郎がものすごく変な人だと知って、深沢の思い出を綴ったというこの本を見てみた。普通に回想録かエッセイにすればいいのに、なぜか小説仕立てで、そのせいで読みにくい(あまり、うまい小説とはいえないと思います)。記録としてもどうかと思う部分がある。ミスターは途中で2人から1人になったはずなのに(1人は牧場に来た女と一緒に出ていったはず)それについては不自然に触れていない。あとがきで「著作権継承者の承諾が得られず」とあるが、これがミスター・ヤギのことだとは触れていないし、ムスコと曖昧な書き方をしてるだけで養子縁組をしてることにも触れていない。そりゃ「小説」なんだし書きたいことだけ書きゃいいんでしょうが、なんだか自分にとって都合の悪いことには触れていないような感じがして、書き手としての誠意がないように感じられた。書きにくいことはいっぱいあるでしょうが、主要登場人物が1人減ってることを書かないなんて、ちょっとおかしいんじゃない?
 やっぱ80年代文化人は、こういうもんかなあ。