青山七恵『ひとり日和』 いかにも芥川賞(いか芥)

(2年ぐらい前にメモしてたのが出てきたので、古いけど)
 07年の芥川賞受賞作だそうで、もう、すごく、いかにも芥川賞(昨今の)という感じだった。選考委員の中でも石原&村上が絶賛して、山田詠美が否定的だったとのことで、まあオヤジ受けするというか、若い女のことが好きだ、知りたい、って人にはいいのかもしれない。
 文章はすっきりしていて上手で、文体で奇をてらおうというのはないのはいいのだけれど(私はどうしても町田康が楽しく読めない)、その上手な文章から透けて見える内面というか人格みたいなものが、なんちゅうか、下品なんだよね。どちらかというと逆のほうがいいと思うのだけど。文章は荒削りでも中身の美しさが冴えてる、みたいな。でもそういうのはきっと芥川賞などとれないのだろう。「私の男」といい、最近は、読んでいて不愉快になるような「若い女の悪意」を描いたものが受けるということなのかしら。
 ハタチぐらいの若い女の「私」が、同居する親戚のおばあさんを悪意たっぷりに見つめ、感じの悪いことを言うのだけど別に喧嘩するわけでもなく、自分の若いボーイフレンドが来たらおばあさんにメシを作らせ、おばあさんメシつくってるのに自分の部屋でセックスして、若いっていいでしょと見せつけ、そのくせに振られたら甘える。まあ悪意だっちゅうなら悪意で通したらいいのだけど、ラストではみょーに道徳的な終わり方(不倫云々の話ではなく)。これのどこがおもろいねん?
 ネット上のレビューなど見てたら、こんなのが選ばれるのはおかしい、選考委員の基準が変だ、などと書いてる人が多くいて、まあそれもそうなんだろうけど、選考委員なんて最終選考に選ばれた数点しか読まないわけで、どっちかというとそれ以前に問題があるんじゃないの?と怪しんでいる。新人作家は何十回となく書き直しを命じられるそうだけど、その結果世に出たものの出来がいったいどんなもんなのか、大手出版社の編集者という人たちは、本当に本が好きな、いい作品を世に出そうとしている人たちなのか。20代後半で年収1千万を超えるような、名詞を出せばどこでもVIP扱いをしてもらえる特権階級サラリーマンが、本当にいいものを選別できる目を持っているのか、私にはよくわからんのです(かといって出版エージェントみたいのはもっと気持ち悪い)。
(追記:その後、川端賞ももらってるみたいですなあ。芥川賞は相変わらずいか芥。)