『右翼と左翼』浅羽通明

 斎藤美奈子も飲み屋の兄ちゃんに「サヨクとかウヨクってなんすか?」と聞かれてコケそうになったと書いていたけど、浅羽通明も学生たちに同じ質問をよく聞かれるらしい。しかも、政治にまったく興味がない人ではなく、ある程度興味を持って本も読むような学生に、だそうである。それでこの本を書いたとのこと。
 私も「サヨクって何? ウヨクって何?」というクチなので、とても勉強になった。アホ向けにやさしく親切に書かれているので非常にありがたい。
 この本を読むと、マルクスなんていうのはカルトに思える。こんなものに多くの人がよく夢中になり、よく国までできたなと。カルトだからこそかもしれないけど。
 過去の経緯をまとめている部分(本の大半)はとてもわかりやすくて「よくまとめられてるなあ。かしこいなあ」と感心するけど、現代の話になるとやはりことが複雑になるせいと、「まとめ」ではなく「自説開陳」の部分が増えるので若干うだうだ感が出てくる。生半可に書く部分も出てくるし。「ネット右翼」と「ネット左翼」を同列に書いてるのはネタ先行としか思えない。ネット右翼は普通だけど、ネット左翼ってどこで見たんじゃ? ネット右翼ネット左翼(そんなものがあればだけど)がネット上で罵倒しあうなんて、見たことないぞ。
 プライドだけを肥大させた自意識が掲示板やブログなどのツールを得て書き散らすことをバカにしておられるようなので(他の本でもホームページなどを作る庶民をバカにしていた)、当ブログなどもバカにされることでしょう。まったく「教養」を標榜される人には…いやいや、そんなけなすようなことは全然なく、本当にいい本でした。これからもちょくちょくひもとかせていただくと思います。「サヨクって何?」と思った折には。