地デジと龍馬伝

 テレビ売り場の展示品でデジタル放送を見ていると、画面があまりにも鮮明で精細すぎて、タレントの肌のキメやニキビあと、額や鼻の頭のギラギラしたテリまでクッキリハッキリ見えてしまい、これはちょっとやばいなあと感じた。別に見る方がやばいのではなく、タレント側にとってこれはやばいだろうなという意味だけど。ドラマで若いイケメン俳優の手のひらがアップで写り、その手がカサカサゴワゴワで薄汚れていて、うわ、きったねー、と思ったこともある。たぶんアナログ放送ではそこまで見えなかっただろうから、今まではそんなことは気にしなくてよかったのだ。
 こうなっては、多分技術的な方面で、早晩「デジタル仕様」に変わっていくのではないかと思う。まずタレント事務所のほうから押し上げがあるかもしれない。例えばバラエティではあまりクローズアップにはするな、とか、メイクは粉っぽくするとか、ライティングはソフトにするとか、それからカメラというか映像自体にソフトフォーカス的な紗をかけるとか…。鮮明に写ることが可能になったのにわざわざ不鮮明にする、という奇妙なことが起こるかもしれないなあ、と思ったのである。
 この間、NHK大河ドラマ龍馬伝をちらっと見たら、映像にわざわざフィルターのような紗をかけてあり、まさにこれはデジタル仕様ではないのかな、と思った。今までのビデオ映像のままデジタルになるとベカベカに写ってしまい、作り物感があらわになってしまう。時代劇だとなおさらだ。ちょんまげのカツラのスジまで見えてしまうのではないか。映像をムーディにする効用ももちろんのことだろうし。民放のドラマでもそのうち何らかの工夫をするようになるんじゃないかな(もうしてる? 見ないのでわかりません…)。でも私のアナログテレビでは、龍馬伝はちょっとボケボケすぎて、ちょっと見にくい。デジタル放送ではこれくらいでちょうどいいのだろうけど。
 しかしこのドラマ、妙にリアリズムを追求しているところがあって、農民の姿がとにかく汚いわ、俳優のメイクは異様に薄いわ、そこまでやるかーという感じなのである。下級武士(なのかな? ちらっとしか見てないのでよくわかりません)の家はまるで廃屋。服装も髪型もコテコテに汚い。農民はわざわざ丁寧にボロボロにして縫い合わせたような服を着て、汚くするために汚くしている感じ。それほど貧乏じゃない家もわざわざセットをすすけさせてほどよく汚して撮影しているよう。逆に「お金かかってるなあ…」なんて思ってしまう。ちょっと「やりすぎ」な気がしてしまうのだ。まあ、いいんだけど、面白ければ。
 で、面白いのか?というと、うーん…。映像は凝りに凝っているけど、あんまり次見ようとは思わないなあ。俳優もいまいちだと思うし。何より、コメディアンのミヤサコが出てるのがイヤだ。やたらNHKに気に入られてドキュメンタリーのナレーションまでやってるけど、下品で嫌い。児玉清も「アタック!」と叫びそうだ(叫んでるのは児玉清じゃないけど)。