バラードのインタビューより

 PC内の数年前のメモにJ・G・バラードのインタビューの抜き書きが残っていて、この間たまたま読んでいたら、この4月にバラードが亡くなっていたと知った。

 ユリイカ1986年のバックナンバー(J・G・バラード特集)に載っていた82年のインタビュー。話題はなぜか自殺に及び、ケンブリッジ医学部にいたことのあるバラードは、医者の自殺の話をしている。こんな感じ(大意&抜粋)。

 医者の自殺率は極めて高いが、これは薬物を簡単に入手できるからだろう。これらの医者の中にはまず間違いなく、癌にかかった者がかなり含まれているはずだ。彼らは今後自分を待ち受けているものが実に不快な状態であることを知悉している。そこでその予防策として自殺するのだ。

 ある雑誌に医師の自殺についての記事があった。自殺しやすい医師たちの専攻別リストによると、最も危険なのが精神科医、ついで小児科医が大した差なく続く。自殺率が最も低いのは外科医で、これは何とも興味深い。最もありふれた自殺の方法は、薬品の注射。1グラムのモルヒネを注入してそのまま忘れてしまう(「1グラムのモルヒネ」は1963年のデータでは極めて多い方法だった)。

 医者というのは恐ろしく沈鬱の気に囚われがちな人種でもある。20年ないし30年の年月はかかるだろうが、それでも少しずつ鬱状態への傾斜度を増していく。近接性によって、病んだ人々、死んでいく人々と果てしなく会い続けることによって…。

 だそうです。ほんとかなー?医者ってそんな共感能力高い人多いかな?とも思うけれど、昔のイギリスではそうだったのかもしれない。

 こんなこと言ってたバラードの死因は前立腺癌。数年間の闘病生活の末だったらしい。

 関係ないが、少し前まで、アカデミーを取った「クラッシュ」という映画は、バラード原作のやつだと思っていた。交通事故に性的快楽を覚える変態の話。そんな映画がアカデミー?、と思いながら、アカデミー賞にぜんぜん興味がないので流していた。もちろんそれは全くの別物で、バラード原作のやつは96年にクローネンバーグが映画化していた。成人指定。そりゃそうだよね。

 80年代のユリイカは、当たり前だけど80年代臭が物凄い。ちょっと読んだだけでもサイキックTVだのスバンダウ(スパンダーと書かないところが80年代ユリイカだ)バレエだの、トマス・ピンチョンだの。うっ、と鼻をつく。