林芙美子

 ちょっと気が向いたので図書館で借りてみた。よく「貧乏の中で強く生きる女の物語」などという言い方をされる「放浪記」だけど、読んでみたら相当、女くさい(「男くさい」という言い方があるのだから「女くさい」もアリでしょう)。貧乏というより、男の話ばっかりしてる感じ。一緒に収録されてる「清貧の書」は、全編ダンナとのノロケ。やっぱり女くさい。そうでないのもあるだろうけど、飽きてそこで読むのやめちゃった。岡本かの子とか円地文子とか、女の生理もの系はちょっとしんどい。
 瀬戸内晴美が書いている解説に、林芙美子の母親がまたそういう人で、芙美子が死んだあと芙美子の夫に、83歳でありながら結婚を迫ったとある。それこそ円地文子ばりだ。
 「放浪記」で当てた金で昭和6〜7年に半年間もヨーロッパ旅行したというのがすごい。シベリア経由の貧乏旅行で夫は置いて一人旅。真冬にニシンを積んだ船でパリからロンドンに渡り、栄養失調で夜盲症にかかって改造社の社長に金を借りて帰国したとある。言葉もわからなかっただろうに。ものすごく根性があることだけは確かだ。