ポルノ映画館で観た『赫い髪の女』

 中上健次で思い出したけど、ずっと前に日活ロマンポルノ上映会に行ったことがある。いろんな作品をやっていたはずだけど、私が観た回は『赫い髪の女』と『実録 阿部定』の2本立ての日。普通の映画館でしてくれたらよかったのに、わざわざポルノ映画館でやっていたものだから、はじめて(そしてたぶん最後)そういう映画館に行くことになった。女の友達と2人でだった。キップ売りのおばちゃんが「何かあったら大声出しや」と親切に言ってくれたのを覚えている。シートが物凄かった。すべてのシートの腰を下ろす部分の、手前中央に大量の白いしみがつき、それが前にまわって流れ落ちる形になっていた。友達と2人でうおーこれは困ったと思ったが、どっかには座らないといけない。汚れていないシートを探したが、1つもない。仕方ないので、たまたま来る前にコンビニで飲み物を買っていたので、そのビニール袋をシートに敷いてその上にそっと座った。
 『赫い髪の女』の上映の日を選んだのは原作が中上健次だったから。トラックの運ちゃんの石橋蓮司が道で宮下順子を拾い、湿った狭い部屋でただれた生活をする、って話だったと思う。今思えば『水の女』と似たような話だ。中上健次の話はみんな似てるけど。あとから思えば『四畳半襖の裏張り』とか一条さゆりの何とかとか、どうせならそういう名作の日を選べばよかった。
 阿部定のほうは、昔の話(戦前?)なのにセットや衣装がしっかりしてて安っぽくないのに驚いた。まるで普通の映画みたいだったな。ラブシーンもぬるいから、ほんとに普通の映画。