林檎の樹

 佐藤優が角川文庫の広告ページでゴールズワージーの「リンゴの木」(角川版はこういう字。風情ないなあ)を紹介していた。オックスフォードのエリート学生が田舎の少女と恋愛したあとあっさり捨てて金持ち女と結婚する、そしてそのあと少女が自殺したことを知って感傷にひたる、みたいな超くだらん話で、佐藤優はこれを「外交官必読の書」だといって後輩に何冊も配ったとか。“ヨーロッパ人の外部に対する目つきというのはこういうものだと思う。読んで嫌〜な感じがするのは、我々が外側の人間である証拠”ちゅうことらしいが、え〜〜〜? そうか? と思った。別にイギリスのエリートに限らず、男ってそういうもんでしょ。「ちょっと面白いかもしれないが、男にとっての商品価値は低い女」を長らくやってきた女(しかも在日という「外部の人間」)である私には、どこの男でもそういうモン、多かれ少なかれ男には誰でもそういう部分はあるとしか言えない。きっと、自分が欧米人から下と見られて初めて自覚したのかもしれないねえ、「外部の人間」がどう扱われるかを。

 しかし「舞姫」とどう違うっていうんだろう。ほとんど同じ話じゃん、と思うけど。罪悪感のあるなし? 罪悪感も「男のロマン」のうちだよ。

 佐藤優は「リンゴの木」を大学で読まされたと言っているが、私もどっかで読まされた気がする…。教科書の定番なのかな。こんなしょうもない話。「舞姫」も高校の教科書の定番だけど(今はそうでもないのか?)、教育上よくないと思うなあ。