大家と借主とどっちが偉い?

 この間、住んでいるマンションの大家さんと話していて、ふと気づいたことがある。大家さんと私の会話ではいつも、私が敬語を使って、大家さんがタメ口または上から口調なのだった。考えてみればお金を出しているのは私のほうなのだし、向こうからすればお客さんなのだから、こっちが敬語を使われて然るべきかもしれないのに、何で大家さんのほうが偉いというスタンスなのだろう?
 ひとつには私のほうが若いということもあるだろうけれど、それでもお店とか行ったら店員さんは若い人にもちゃんと敬語使うよね。家賃なんて、ちょっとしたお店で使うお金とは桁の違う高額な金額ですよ。そんなたくさんのお金を払っているのに、何でお金を払う人のほうが立場が下なんだろう?
 今まで住んだマンションや貸家を思い出してみれば、思えば大家はみんなそうだった。大家が同じ敷地に住んでおらず管理会社とやりとりするところもあるので、同じ敷地や隣に住んでいて家賃を直接払いに行ったりする大家さんを思い出してみれば、みんなそう。ざっと思い出せば、今の大家さんを含めて4人。そしてもうひとつ全員の大家さんに共通する特性は、「ドケチ」であること。ずっと前のことだが、上の部屋からの水漏れで部屋が水浸しになった時も、買い換えた絨毯の領収書分しか(1円単位まで正確に)くれなかった。絨毯以外にも損害はたくさんあったし、第一、気持ちってものがあるだろうに。。
 部屋の設備が故障してもとにかく直すのを渋る渋る。そしてまた全員の大家さんに共通するのは、お金がもったいなくて修理をめったに業者にたのまないこと。自分で修理に来るのである。そして素人の適当な修理であるため、本人は「僕は何でも自分でできるねん」と豪語するけれど、まあ、またすぐに壊れる。
 洗濯機を配達してきた電器屋さんが、水道の水漏れを指摘して、「これは蛇口を付け替えないと直りませんよ」と言っていた(こっちはちゃんと敬語で)。大家に伝えると、「ええー? 今直してほしいのぉ? しゃーないなあー」と渋った挙句(洗濯機置き場だけでなく、台所の下水もダダ漏れだったので、明日まで待てというのは無茶だった)ポタポタと水漏れしているのを見ても「気になる?」などと聞かれ、当たり前じゃ!と思いながらも「はぁ」と答えると、「しゃーないなあ」と、パッキンだけ付け替えた。「蛇口を変えないと」という旨も伝えたが「業者はすぐそういうこと言いよるねん。そんなんいちいち聞いてたら金かかってしゃーない。大丈夫大丈夫。ほら、これで絶対大丈夫! 修理、終わりっ!」と意気揚々と帰って行った。
 今、洗濯機置き場の水道は、蛇口に触る度に、接続部からシャーと水が噴き出して顔まで濡れるありさま。もう、大家に言うのも面倒くさいので、また引越し先を探そうと考えている。それに、部屋の前が妙に下水くさい。部屋の中もにおう。水周りが全体におかしいんだと思う。だいたい、台所の下水ダダ漏れだって、引越し当初からあの状態だったのだから、一言くらい詫びの言葉があってもいいんじゃないかなあ。
 あ、そういえば、思い返してみれば、大家に家賃を払って「ありがとう」と言われたことが、今までの人生で一度もない! もしかして、世の大家は「自分が下手に出たら負け」と思っているのだろうか。それとも心の底から「貸してやっている」と思っているのだろうか。