加藤和彦が自殺

 驚いた。自殺するようなタイプには思えなかった。いつもフワフワと前向きでお気楽で楽しいお坊ちゃん人生の人だと思っていた。人生、どうなるかわからん。
 サディスティック・ミカ・バンドのミカは『黒船』のプロデューサーだったクリス・トーマスと不倫して離婚、イギリスに渡ったのだが、ある時、このミカがテレビに出てきたことがある。その時ミカはクリスとも離婚してシェフをしているとかいう話だった。今はどうしてるのだろう。別のインタビューでミカは加藤和彦のことを「本当に優しい人だった。私がクリスと結婚してイギリスに行く時も、全く怒らず、辛かったらいつでも帰ってきていいからね、と言ってくれた」と言っていて、それを読んだのは随分昔なのだけど、加藤和彦の人柄がしのばれて、とても印象に残っている。まあ実際はあっさり安井かずみと再婚したわけで、このあたりも「楽しいお気楽人生」と思わせるゆえんでもあった。ミカといい安井かずみといい、つくづく個性の強い女が好みなのだなあとも思った。ミカバンド時代にミカにプレゼントした白い大きな外車の前でポーズを取る写真を見たことがある(もちろん当時は知らないので、ごく最近見たのだが)。おしゃれでセンスがいい、育ちがいい、それが嫌味でない、とにかくそういう感じだった。
 安井かずみを看取って、そのあとすぐに若い女と結婚したと聞いた。そりゃそうだろうなあと思っていた。今日見たニュースによると、その女とも離婚して、今は別の若い女(30代だそうだが、加藤が60代なのだから若い女である)と同居していたらしい。安井かずみは年上だった気がするが。
 その前妻も「たぶん、あんな優しい男性は世界中を探してもいません。形だけの優しさではないんです」とミカと同じことを語っている。死人だから良く言うわけではなくて、本当にそうだったんだろうと思う。なのに、女のほうから別れを切り出させてしまうのは、個性的な女を選んでしまうゆえか。
 ミカバンドはその後、桐島かれん木村カエラを据えてにわか再結成(?)されていた。創作力もセンスも衰えていたことは、それだけからもわかる(ていうか、昔が鋭すぎた)。
 ロック好きだったので私にとって加藤和彦はミカバンドの人だが、本来の持ち味は『イムジン河』『悲しくてやりきれない』『あの素晴しい愛をもう一度』などに表れている優しさのほうだったのかもしれない。合掌。