『魔王』(韓国版)ラストに思う

 ネタバレです。

 最終回をさっき見終わった。ラストは韓国伝統の○にオチ。やっぱこうなるしかないかー。このドラマだけで一般化するわけではないけど、韓国人にはこう、何ともいえず暗〜い情念が胸のうちにあるね。最後に死ぬことで胸にすとんと落ちるものがあるんだろうね。悲劇好きだったり自殺が多かったり。一方で東洋のラテンといわれるほど明るくて何も考えてない部分もあったりするので、一言では言えない複雑さがある。昔のドラマや映画はほんとに○にオチばっかりで、またかよー、と思ったものだけど、最近は多様化してきた。でもこの作品みたいに本格的なシリアスドラマは、王道ラストになりやすいのかもしれない。もし放映中に人気が出て、「主人公を殺さないで〜」という投書が殺到していたとしたら、あっさり違うラストになったと思うけど、いかんせん、視聴率が低かったらしいのよね…。

 まあいくら韓国に○にオチが多いとしても、このあっさりしたラストシーンはさすが大陸だなあと思った。山口文憲が、日本人というのはお話のラストに登場人物がみんな集まってよもやま話をするシーンを必ずくっつけたがる、と書いていた。それに比べて香港映画のラストは、主人公がでやーっ、とキックして敵を倒そうとしているシーンでストップモーション、どーんと「終劇」の文字、というあっさりしたものが多いと。言われてみたら、マンガでも映画でもドラマでも、日本ではだいたい最後に「おまけ」のシーンがあって、ラストがあっさりしてるとどうも収まりが悪い心情があるみたいだ。『魔王』のラストはいかにも大陸的で、どーんとラストシーン、画面の下に「今までご覧くださってありがとうございました」の文字。うーん、大陸。よく知らないけど、日本版の『魔王』には「おまけ」のシーンがあったんじゃないかな。韓国版の半分以下という短い尺の中で、どうしても「おまけ」を入れずにはいられないというのが面白い。

 でも、このドラマの良さはオチがどうこうとか、もっと言えば話の筋がどうこうというよりも、その中での人間の心情の描き方がすごいので、まあラストは何でもいいというか…。個人的には、罪を抱えたまま生き続ける2人、という余韻のあるラストがあってもよかったかな。

 超能力設定は、後半は完全に不必要なものになってた。なんであんなの入れたんだろう。タロット程度にしておけばよかったのに…。

 ちなみに、私の一番好きな登場人物は、ヨンチョル。何度も泣かされたよ、ヨンチョル…。