『宮』のキスシーン

 『宮』23話ラストのキスシーンの演出に驚いた。帽子をかぶって変装(になっておらんが)した皇太子と皇太子妃が想い出づくりのためにこっそり街に出る。皇太子妃が「私をどれだけ愛してるか教えて」とか何とかぬかすと、皇太子は「知りたいか」とか何とかぬかしておもむろに2人の帽子を取り、群衆の中で長々とキスをする、という、乙女ならキャー、というシーンなんじゃが、どうもこれ、隠し撮りのようなんじゃな。ずっとロングで遠くから撮影していて、セリフはあと録り。周囲の人たちが徐々に有名人の2人に気づき始めて、画面のはしっこの人たちから人が固まってきて2人を注視し出す。キスが始まると騒然とし出し、遠くからも人が走ってくる。オバチャンも立ち止まる。きっと現実には「あれ『宮』の2人じゃない?」「撮影かな?でもカメラないからほんとのデートかな」とか何とか言いながら有名人にたかり始めているに違いなく、それをドラマの中では皇太子と皇太子妃に気づき始めて騒ぎ出した群衆という設定にうまく重ねているという、絶妙の演出で。話はいかにもご都合主義でとばしとばし見ているが、やっぱり凝っておるなあ、と感心してしまった。今の日本なら、画面に入っている全ての人たちに了承を取らねばならないから無理な手法なのだろう。これくらいの遊び、あったほうがいいと思うけど。

 23話には前半にもキスシーンがあって、これが、17歳で肉体関係もない(はず)の設定の2人のキスとしては異常に濃厚すぎて笑ってしまった。口開けまくり、舌出しまくりで…。全体にはキスシーン以上のラブシーンのない清純なはずのラブコメなのに…。エロは抑制されてこそ溢れ出すのだという真理をかいま見ました。