いちゃいちゃ太閤記

 それでその1965年の「太閤記」だけど、これが見物だった。だいたい緒形拳追悼特集だというのに、緒形拳なんかちょこっとしか出てなかったもんね。なぜならこれは「本能寺」の回で、主役は信長(と森蘭丸)。なんでわざわざ出番の少ない回を?というと、この回しかテープが残っていないのだそうだ。

 何が面白かったって、何の遠慮もなくホモホモしかったから。今では歴史ものは腐女子の大好物ということは知れ渡っているから、つくる方も意識してると思うけど、1965年だからねえ…。何だか美丈夫の信長と、片岡孝夫演じる森蘭丸が悲壮感たっぷりにいちゃいちゃしてた。「お蘭」なんて呼びながら。信長が落としてくれたざんばら髪を振り乱しながら槍を振り回すお蘭の姿は、さすが歌舞伎役者だけあってきびきびして様になっていた。何でも当時、「信長を殺すな」の投書が殺到したため、本能寺の回は数ヶ月延期になったそうで、それもよくわかる、かっこいい信長だった(俳優は高橋幸治)。

 そいで主役の緒形秀吉は何してたかっていうと、こっちはのんびり、やっぱりお小姓の石田三成(当時慶應の現役学生だった石坂浩二)といちゃいちゃしてた。お肩おモミしましょうか〜、いやあ凝ってますよ、お床でおモミしましょうか〜、なんて言いながら。

 まあ、たまたまそういう回だったのかもしれない。たまたま。でもたぶん、戦国時代の小姓がどういうもんなのかを含ませるぐらいの意図はあったと思うなあ。

 番組ではそのあと、有名な弁慶の仁王立ちシーンもやってたけど、ホラーとしか言いようがなかった。子供の頃にこのシーンを見ていた人が、夜寝られなくなるくらい怖かった、と言ってたけど、確かに。