ブルーグラスは日本人好み

 何週間か前、ピーター・バラカンのラジオで「ビル・モンロー生誕100周年記念特集」という、お勉強好きなこの番組らしい特集をやっていた。その中で、ピーター・バラカンとゲストのブルーグラス雑誌編集長の人が言うには、ブルーグラスは日本人には人気があるのだそうだ。ブルーグラスという音楽ジャンルの小ささに比べて、日本ではブルーグラスのバンドが妙に多い。それはなぜかというと、そのミソは「楽器の技術の追い求め」にあるのではないかと。「めちゃくちゃ早い」とか「あと一歩でプログレ」であるとか。バラカン氏によると、「日本人はプログレも好きだけど、やっぱりあの、技の細かさが好きな人が多いという印象がある」。
 学生の時、知り合いでブルーグラスをやってる人がいた。楽器はバンジョー。その頃私はブルーグラスなんてほとんど聞いたこともなくて、なぜいまこの日本においてブルーグラス?と、すごく訝しく(?)思ったのを覚えている。カントリーならみんな知ってるしまだわかるけど、なんでブルーグラス?と。カントリーよりもうひとつディープなアメリカの心、としかその時はとらえていなかったのだ。それを日本人がマネしてどないなるねん、と、口には出さなかったけど思ってた。それをいえばロックだって同じだが、ロックはもっと混血度が高いし、グローバル化の度合いが比較にならない。
 その時はその子はきっと「人と違うものがしたい」「ルーツミュージックが通っぽくてかっこいい」ぐらいの理由でブルーグラスなんだろうかね?ぐらいに勝手に思っていた。私淑しやすい人だったから、上の世代の誰かに師事して、というのもあったみたいだし。
 「技の細かさ」か、なるほどなあ…。長年の謎(というほどでもない)が解けたよ。バラカンさんありがとう。プログレというより、ヘビメタやハードロックを日本人が好む心と似てるような気がする。ヘビメタの人も見かけと違ってすごく礼儀正しかったりして、まじめで練習ばっかりしていたというし。なんとか奏法、とか細かい技をマスターすることに燃えるし。
 ルーツミュージックといえば、ブルースも日本人で好きな人が多いけれど、これは落語好きとも似てる気がする。実際、ブルース好きと落語好きが重なる人も多いし。もうひとつ言えば、ジャズ好きとプロレス好きが重なる人も多いのだ(オジサン以上の年齢の人になるけど)。ミソは「技の細かさ」だと思えば、すべてがすっと理解できる。