自殺防止キャンペーン

 何の提灯持ちかしらないけど、このごろNHKで自殺特集番組をよくやってる。福祉ネットワークでしばらくやってたのを夜中にまとめて再放送してたし、この間は「日本のこれから」でもやってた(出演者も内容もだいぶかぶってたけど)。しかし、見ててどうも隔靴掻痒というか、ずれてる気がしてしかたがない。多重債務や不況のせいで追い詰められて、というのがストーリーになってることが多いけど、自殺者のいったいどれぐらいがそういう理由で自殺してるのかな。つまるとこ、自殺防止のために生活保護枠を増やそうという方向しか見えず、そのためのキャンペーンにも見えてしまう。そりゃ景気がよくなれば(金があれば)自殺までしない人が多いのは確かだろうけど、どうも本質的ではないような…。
 それに、番組に出てたような、自殺未遂したあと自助グループを立ち上げた、とか、その体験をテレビで語れるような前向きな人って、自殺を図る人の中では相当少数派だと思うぞ。基本、自殺しようなんて人は他人と交流なんてしないような。体験者の声を聞くのは重要かもしれんけど、声を上げる人の声だけを聞くのは偏りが出るような…。視聴者からのご意見で「日本は人々の幸福度が極めて低い国です」というのがあって、その辺ポイントだと思ったんだけど…。
 今日の朝日の書評欄で池田清彦が自殺について小さい記事を書いていて、ここでは日本の自殺者が多いのは「まじめだけれども不寛容な人がどんどん増加しているせいだ」としている。「何であれ世間の風に従順で、それに逆らう少数派をみんなでいじめる、という日本人の感性はどこからきたのか」ということで内田ジュの本を紹介してるのでうーん、というところなのだけど、普通に「日本人の精神構造」が原因としてるのは賛成。
 福祉ネットワークではいじめが原因で13歳で自殺した女の子の遺族を紹介していた。遺書には「お父さん、お母さん、私はこの世が大嫌いでした」などと書かれており、こういう子供に対して「生まれてきたことに感謝しましょう」「生かされてることの喜び」などというタワゴトがどれだけ虚ろに響くだろうと思った。この両親には娘の死後、「子供を自殺させた親」と嫌がらせが相次いだとのことに本当に驚いた。こういうことができる精神構造にこそ、原因があるのではないかしらと思う。