『アレキサンダー』 小さい大王

 巨額の制作費をかけてポシャった大作とのことだけど、これでは確かに…。とにかく戦闘シーンが無駄に長く、無駄に残酷に描かれて、無駄に金がかかっている。ベトナム帰りで『プラトーン』撮った監督さんだから、戦争シーンにはこだわりがあるんだろうけど、どうだい、リアルだろ? え、リアルだろ?と押しつけがましいのにうんざりする。戦闘シーンは無駄に長いのに、肝心の歴史の流れについては語り部役のアンソニー・ホプキンスがぺらぺら説明するだけで飛ばすから、結局戦争シーンをねちっこく描きたいだけ?と思ってしまう。
 それにしてもアレキサンダー、小さい男です。歴史に残る大遠征は、お母さんからの逃避のため。終始眉を寄せた困った顔で(俳優さんがもともとそういう顔なんだろうけど)やたらうじうじ悩んでる。部下に批判されたらキーッとなってヒステリー起こす。何だかとても歴史的偉業を成し遂げた男には見えません。現代人みたい。
 現代人みたいといえば、登場人物が現代アメリカ人みたいにやたら神神言うのもどうかと思った。もちろんキリスト以前の話なので、やたらゼウスゼウス言うとか、ギリシャ神話とか王女メディアとか…。でも本当にこの時代の人が現代アメリカ人のような感覚で神を捉えてたかどうかは疑問だなあと思うのですよ。ゼウスゼウスって。いいのかなあこれで…。
 それにこの時代に王様の妃になる女が、王様に(男の)愛人がいたのを見たからってあれほど激怒するかなあ? やっぱり、現代アメリカ人の感覚じゃないの?
 なんかもうちょっとなあ、いろいろ描くべきことがあるんじゃないのかなあ。でもまあ、オリバー・ストーンだから、こういう感じになるのは仕方ないか。この監督さん、嫌いじゃないけど、なんでアメリカで有名なのかよくわからないところがあるな。暗いし、ダルいし。通俗的な部分があるからかなあ? 暗さも「文化的」「重厚」と捉えられてるのかもしれない、アメリカ人には。
 監督じゃなくて脚本だったと思うけど、『ミッドナイト・エクスプレス』は好きだった。あれも暗かったなあ〜。でもその暗さが良かった。そういえば同監督の『ドアーズ』でジム・モリソンのそっくりさんをしてた人がアレキサンダーのお父さん役をしてて、うわーおっさんになってる!と時の流れに驚きました。『ドアーズ』も無駄に長くてダルい映画だった…。